【完全解説】労務費の基準とは?改正建設業法に基づく計算方法と見積実務ガイド
2025.06.17更新

目次
はじめに:なぜ「労務費の基準」が重要なのか?
建設業界では人手不足や高齢化が進み、若年層の入職促進が急務です。特に、技能者が長く安心して働ける環境を整えることが重要視されています。2024年の改正建設業法では、この課題を受けて「労務費の基準」が制度化されました。これは、賃金の適正化と技能者の処遇改善を促進するための重要な指針です。
制度導入の背景と目的
かつて685万人いた建設業従事者は、現在479万人にまで減少しました。また、技能者の平均年収は432万円で、全産業平均の508万円を大きく下回っています。こうした状況の要因のひとつが、「総価一式契約」に起因する見積りの不透明化です。さらに、過度な価格競争が労務費の圧縮を招いてきました。
そのため、「労務費の基準」は技能者が正当な賃金を受け取り、業界全体が持続的に成長するために導入された制度です。
改正建設業法の概要と新ルール
- 労務費の基準策定(第34条):中央建設業審議会により制定
- 下回る契約の禁止(第20条):著しく低い金額での契約は禁止
- 違反事業者・発注者への対応(第28条):指導・監督・勧告・公表
- 見積書への明細記載義務:材料費・労務費・必要経費の内訳を明示
「労務費の基準」の構成と計算方法
労務費の構成要素と具体例
労務費の基準は、技能労働者に対して支払うべき金額を明確にするものです。以下の4要素で構成されています。
- ① 賃金: 基本給+諸手当(技能者の給与)
- ② 法定福利費: 事業主が負担する社会保険・厚生年金など
- ③ 安全衛生経費: 保護具(ヘルメット、安全帯など)にかかる費用
- ④ 建退共掛金: 退職金共済制度への掛金(例:1日320円)
📌 労務費の計算例
例)公共工事設計労務単価:18,000円/日(令和6年)
- 賃金:14,000円
- 法定福利費:2,500円
- 安全衛生経費:1,000円
- 建退共掛金:500円
合計:18,000円/人日
🧮 労務費の計算式
労務費 = 労務単価 × 歩掛 (例:鉄筋工事10㎡当たり → 18,000円 × 0.6人日 = 10,800円)
このように、労務費の基準と計算方法を理解することは、適正な見積作成や法令遵守に直結します。
契約段階における「入口対策」
- 労務費を内訳明示した見積書の作成
- 下請事業者が提出した見積書の内容を元請が尊重
- 公共工事においては、見積書の提出を入札加点の対象とする例も拡大中
支払い段階における「出口対策」
- 「建設Gメン」による支払い状況の監査
- 電子媒体による履歴確認と監督の強化
- IT活用による実態把握と不正排除の徹底
CCUSと労務費基準の連携で処遇改善へ
CCUS(建設キャリアアップシステム)では、技能者の就業履歴や能力評価がデータ化されます。これにより、CCUSレベルに応じた年収・手当の支給が可能になり、処遇改善の指標としても活用されています。
また、建退共との電子申請連携も強化され、事務作業の効率化と透明性の向上も期待されます。
企業が取るべき対応策
労務費の基準に対応するために、以下のような実務対応が求められます。
- 見積書への法定福利費、安全衛生費、建退共の明記
- CCUS登録・能力評価を社内で促進
- 契約形態の見直しや社員化に伴う制度整備
「技能者を大切にする企業」制度の活用
国土交通省は、処遇改善に取り組む企業を「技能者を大切にする企業」として登録・公表。ロゴマークの使用や経営事項審査での加点、公共発注での評価など、実質的なメリットも用意されています。
参考リンク
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【執筆者】ローイット関西行政書士事務所
代表行政書士 中市 勝
建設業手続きの実績はグループで300件以上。関西に携わる建設業関連(建設業・産廃業・宅建業)をメイン業務とし、その中でも建設業許可に特化。大阪・東京での行政書士事務所のグループとして一人親方から上場企業まであらゆるニーズに対応。