建設業と社会保険その1~背景と適切な保険(一人親方必見!)~
2017.12.07更新
ご訪問いただきありがとうございます。
ローイット関西行政書士事務所の行政書士の中市です。
さて今回は建設業者のお悩みの種になってる建設業と社会保険について掘り下げていきたいと思います。
ではいってみましょう!
目次
社会保険未加入企業が結構多いという背景
現状、社会保険未加入企業が結構多くいらっしゃいます
- いざというときの公的保障が確保されず、年齢の若い職人減少の一因となってます。
- 適正に保険に加入し、法定福利費を負担している事業者が競争上不利になるそうです。
そんな背景があったため国土交通省が、
という目標を掲げました。
そして同時に「下請け指導ガイドライン」(平成24年11月1日)において、平成29年度以降は社会保険に加入していない事業所に対しては「今後下請け契約をすべきではない」との見解も出しました。
実際この目標を掲げた時(平成24年)の建設業界の労働者の約4割が社会保険に加入していなかったそうです。
しかしこの国交省の「下請け指導ガイドライン」は4月以降、「適切な保険」に加入していることを確認できない作業員について、元請け企業は「特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべき」と明記しました。
この”適切な保険”ってのが曖昧なのが現状です。
まずはこの適切な保険を見ていきましょう!
適切な保険って何?どれに入ったらええの?
まず前提として建設業では、株式会社などの法人と個人経営の事業所のうち、常時使用する労働者が5人以上の場合は、雇用保険と健康保険、厚生年金への加入が義務付けられています。
- ※ 雇用保険に加入する場合には、管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を毎月10日までに提出しやなあきません。初めて雇用保険の加入手続きを行う場合には、事前に保険関係成立に関する手続きを済ませておく必要があります。
- ※ 健康保険・厚生年金(社会保険)に加入するためには、労働者を雇用した5日以内に、所轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出します。
法人に務めている人が入るべき保険
◇法人の労働者さんが入るべき保険(計3つ)
- ① 雇用保険
- ② 下記のどれか1つ
- 協会けんぽ
- 健康保険組合
- 適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等)※
- ③厚生年金
◇法人の役員さんが入るべき保険(計2つ!)
- ①下記のどれか1つ
- 協会けんぽ
- 健康保険組合
- 適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等)※
- ②厚生年金
◇【5人以上労働者を雇っている】個人事業主に雇われている労働者さんが入るべき保険(計3つ!)
- ①雇用保険
- ②下記のどれか1つ
- 協会けんぽ
- 健康保険組合
- 適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等)※
- ③厚生年金
◇【1人~4人以下の労働者を雇っている】個人事業主に雇われている労働者さんが入るべき保険(計2つ!)
- ①雇用保険だけでOK
- ※ 従業員が4人以下の小規模な個人事業所は健康保険とか厚生年金保険に入る義務なし!よって従業員が健康保険や厚生年金に入ってなくても特段問題なし!
- ※ なので医療保険と年金保険については労働者さん個人で加入しましょう!日本は国民皆保険、皆年金ですからね!
◇個人事業主や一人親方がはいるべき保険
これムチャクチャややこしいです!世の中の一人親方をリスペクトしているので、以下ガッツリ行きます
一人親方ってなんなん?
労動者として企業に雇われるのではなく、個人で工事の一部を請け負い、会社と契約するような働き方をしている人のことをいいます。
具体的には、
- 事業主として個人で仕事を請負っている
- 会社に在籍しているが、そことは請負で仕事をしている
- 親方の下で修業中やけど、親方とは雇用関係なし
という感じでしょうか。
さて一人親方は業務委託や個人請負で現場に入っているから会社で保険に加入する必要はないんじゃないかと思ってませんか?
実際には仕事の指示や指揮監督を受けてるといったことで労働者に当たると判断され、会社で保険加入するべき場合もあるんです。
現場で働く一人親方の皆さんの働き方が、事業者としての働き方なのか、労働者としての働き方なのか事例を基にみていきましょう。
一人親方の労働者性が認められなかった事例(一人親方)
結構事例があるんで全部網羅しましょう。
工務店の工事に従事する大工さん
- 自分の判断で工事に関する具体的な工法や作業手順を選択できた。
- 事前に連絡すれば,仕事を休んだり,所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった。
- 他の工務店等の仕事をすることを禁じられていなかった。
- 報酬の取決めは,完全な出来高払の方式が中心とされていた。
- 一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し現場に持ち込んで使用していた。
職人一人親方
- 会社からの仕事を受けるか否かの自由、一定の期間や日時の仕事を断る自由、仕事の依頼や業務に従事すべき旨の指示に対する諾否の自由があった。
- 報酬は基本的には出来高に対するもので、従業員として従事した場合に比べて超高額だった。
- 工具一式や自動車を所有し、経費も負担していた。
- 確定申告を行い、労災保険は一人親方として特別加入していた。
手間請けさん
- 具体的な仕事を承諾するかどうかは、諸条件を交渉して決定していた。
- 会社から立面図と平面図が渡されるが、具体的作業方法は特段指示されなかった。
- 他の大工に手伝ってもらうことができ、その報酬は本人が支払っていた。
- 報酬は坪単価方式によって決定され、毎月工事の進行状況に応じ支払われた。
- 勤務時間の定めは全くなく、出勤簿もなかった。
- 4、5か月会社の仕事をしなかったことがあり、工期に遅れない限り他社の仕事をすることも許されていた。
職人グループで仕事を引き受けていた
- 5名の同業の職人とグループで仕事を引き受けていた。構成員相互間には使用従属関係はなく、仕事を引き受けるか否かについても、全員が相談の上決定していた。
- 仕事の報酬については、グループ全体で完了した出来高に応じて支払われた。
- 常に特定の会社の仕事に従事しなければならないとの拘束はなく、グループのうち数名の者が他の仕事に従事することも自由であった。
- 仕事の報酬については、グループ全体で完了した出来高に応じて支払われていた。
- 必要な資材は会社から支給されたが、工事は、グループで購入した道具類及び個人で所有している道具類を使用してなされた。
とりあえずズラッと並べてみました。
要は一人親方として自由な意思決定が出来たか、経費や道具等も自己負担していたかということになります。
では次に一人親方の労働者性が認められた事例を見ていきましょう!
一人親方の労働者性が認められた事例(一人親方ではない)
下請専属契約の場合
- 入社以後、給排水配管等の修理工事に専属的に従事していた。
- 勤務開始時間に会社に無線で連絡、指示に従い仕事先に直行し、仕事が終了すると無線で報告、会社から次の指示を受けていた。
- 作業に使用する道具類・車両は会社の所有物であり、貸与を受けていた。
- 作業材料は会社が契約している材料店で仕入れ、材料費は会社が支払っていた。
労務提供の契約があった
- 就業期間中に他社の仕事をしたことはない
- 大工職人としての仕事のほか、ブロック工事など他の仕事にも従事を求められた。
- 勤務時間の指定はないが、朝7:30に事務所で仕事の指示を受け、事実上17:30まで拘束され、それ以降の作業には残業手当が支給された。
- 現場監督からの報告・指示によって、会社から指揮監督を受けていた。
- 大工道具は本人の所有物だが、必要な資材等の調達は会社の負担であった。
雇用契約も専属契約もなし
- 自社専属のスレート工として処遇し、専属支配下においていた。
- 作業の遂行に当たり会社から具体的な指揮監督を受けていた。
- 出来高払制の報酬を受けていたが実質は労務の対償として支払われていた。
雇用契約のない職人
- 会社と職人は雇用契約書を取り交わさず、就業規則等の定めもないが、各職人の日給額等は各人の経験能力等に応じて会社が判断の上決定していた。
- 会社の指揮監督を受け、会社から材料、用具等の供与を受けている。
- 会社が仕事の結果について一切の責に任じている。
- 報酬は会社が作成した出面帳により日々の稼働状況を把握し、各月の労働日数等を賃金台帳に収録し日給等の支払基準により計算している。
上記より、一人親方バージョンと一人親方ではないバージョンが大体把握できたと思うので、
一人親方の適切な保険は下記の通りとなります。
一人親方に労働者性が認められない場合
日本は国民皆保険、皆年金ですから一人親方さんは国民健康保険と国民年金に加入しましょう。これだけでOKです。
ちなみにこっちのバージョンの一人親方は労働者ではなく事業主とみなされるので雇用保険や労災保険には入れません。
しかし一人親方になにかあると生活が出来なくなるので、自分のために労災保険に加入することができる制度があります。それが『労災保険への特別加入』という制度です。
詳細は下記URLをご参照ください。
労災保険への特別加入 |厚生労働省
一人親方の労働者性が認められた場合
この場合は同じような保険に加入させる必要があります。
具体的にいうと他の労働者と同じ扱いにしなければなりません。よって会社の雇用保険や健康保険、厚生年金保険に加入させる必要があります。事業形態によって入る保険が違うので詳しくは上述しておりますので、該当箇所をご覧ください。
終わりに
建設業と社会保険についての解説いかがでしたでしょうか。
次回はもっと掘り下げて加入してなかったらどうなるか等をやっていこうと思います。
では今回はここまで!お疲れ様でしたm(_ _)m
【執筆者】ローイット関西行政書士事務所
代表行政書士 中市 勝
建設業手続きの実績はグループで300件以上。関西に携わる建設業関連(建設業・産廃業・宅建業)をメイン業務とし、その中でも建設業許可に特化。大阪・東京での行政書士事務所のグループとして一人親方から上場企業まであらゆるニーズに対応。
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