あなたはどのパターン?5つのパターンから考える、主任技術者、監理技術者の落とし穴
2019.07.01更新
社内に主任技術者、監理技術者がいないのに工事を請負っていませんか?
専任技術者が現場に出ていませんか?
主任技術者や監理技術者がいないと、許可を取得しても工事を施工することはできません。
そして専任技術者は現場に出てはいけません。
何でダメなの?建設業許可は取得してるのに?って思った方もいるんじゃないでしょうか。
今回は、許可取得後に潜む、配置技術者という落とし穴について書いていきたいと思います!
まずはあなたの状況が下記に該当するか確認してみましょう。
- ① 建設業許可を取得した一人親方(個人事業主)
- ② 代表取締役である社長が経営管理業務責任者と専任技術者を兼務しているが、従業員を雇用していない会社
- ③ 主任技術者はいるんだけども、現場の数に比べると人数が少ない
- ④ 特定建設業許可を持っているが、主任技術者しかいない
- ⑤ 専任技術者が現場に出ている
どうでしょう?
あくまで私個人の経験上の話になりますが、そこそこの数の業者さんが該当しているんじゃないでしょうか。
そして①~⑤の状況の業者様からのよくある問い合わせは、この状況で工事を請負った場合、問題あるの?です。
イメージしやすいように実際にあった主任技術者、監理技術者、専任技術者に関するお問い合わせを交えながらの解説にしていきたいと思います!
目次
パターンその①「建設業許可を取得した一人親方(個人事業主)」の場合
お問合わせ内容:一人親方です。建設業許可を取得するよう元請から言われたので苦労して取得したんですが、初めて自社でやってみた決算変更届の工事経歴書を見た行政庁から指摘を受けました。一人親方なので私が現場に出るしかないんですが、大丈夫ですよね?
原則、専任技術者は現場に出てはいけない。となってはいますが、あくまで原則です。
一定の条件さえクリアしていれば、工事を請け負うことが出来るので現場に出ても大丈夫です!
この一定の条件は下記の通りになっています。
- 工事現場は一人親方の事務所から通勤圏内にエリアを絞り、事務所と連絡を取れる体制を作りましょう。
大阪府の建設業許可相談窓口によると現場まで距離が約10km以内、かつ、時間で言うと1時間弱で通えるくらいなら十分通勤可能なので、そのエリア内の工事であれば大丈夫とのことです。
明確な通達が無いため都道府県によって考え方が違うのが現状ですので、大阪府以外の業者さんは、念のため自分の事務所を管轄する行政庁に確認してみましょう!
- 工事一件の請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事は請けないようにしましょう。
- 一人親方の事務所で工事の請負契約をした建設工事であることが必要です。
パターンその②「代表取締役である社長が経営管理業務責任者と専任技術者を兼務しているが、従業員を雇用していない会社」の場合
お問合わせ内容:個人事業主として建設業界に入って20年。会社を設立して建設業許可を取得しましたが、まだ人を雇う余裕が無いので、社長が経営管理業務責任者と専任技術者だけど、現場に出ています。従業員もいないし、私が現場に出るしかないんですが大丈夫ですよね?
これも先ほどの一人親方と同じく、一定の条件(①と同じ)をクリアすれば工事を請け負うことが出来るので現場に出ても大丈夫です!
ただし!①②の一定の条件をクリアすればOKというのはあくまで例外です。
主任技術者になれる資格・経験を持った人を雇わないと、いつまでも条件に縛られます。
通勤できる範囲で3,500万円以下の工事しか請負わない場合は気にしなくてもOKです!
パターンその③「主任技術者はいるんだけども、現場の数に比べると人数が少ない」の場合
お問合わせ内容:決算変更届に添付する工事経歴書で困っています。現場の数に比べて主任技術者が少ないので、どうしても現場や工期が重なってしまうのですが、このまま素直に記載しても受理されるのでしょうか?素直に記載した工事経歴書から罰則等で適用される可能性があるのかという所も心配しています。
主任技術者の現場や工期が重なってしまうことは、よくある話ですよね。
建設業界は慢性的な人材不足ですしね。
でも下記2点をクリアしていれば、決算変更届が問題なく受理される可能性が高くなります。
大阪、京都、奈良ぐらいの現場であれば工期が重なっていても、受付られないという事はないですし、経験上、受け付けられなかったことはないです。(大阪の建設業相談担当にも確認済みです。)
ただ大阪、東京、福岡の現場で同じ主任技術者を配置、しかも工期が重なっているのはマズいです。なぜなら建設業法上、主任技術者は現場に配置しないといけないという決まりがあるからです。
つまり一日1回は現場に出ないといけないという事なので、現場が離れすぎていると、現場に出られないとみなされて、行政指導付きの受理になる可能性が出てきます。
この金額を超えてしまうと、現場に専任する義務が発生します。つまり3,500万円以上の工事が終わるまで、他所の現場には出られないことになっているので、窓口で工期が重複するのはオカシイ!と言われ、行政指導付きの受理か、何かの間違いであれば修正してくださいとお願いされます。
大阪府の建設業許可相談窓口によると主任技術者は県をまたぐことに関しては問題なく、1時間くらいで行き来できる現場であれば大丈夫との事です。
明確な通達が無いため都道府県によって考え方が違うのが現状ですので、大阪府以外の業者さんは、念のため自分の事務所を管轄する行政庁に確認してみましょう!
あと罰則が適用された。。。という話を聞いたことはありません!
パターンその④「特定建設業許可を持っているが、主任技術者しかいない」場合
お問合わせ内容:特定建設業さえ持っていれば、主任技術者しかいない状況でも下請けに4,000万円以上の工事を施工させることが出来ると思っていましたが、間違いでしょうか?
特定建設業許可が必要となる工事には、主任技術者ではなく、必ず監理技術者を配置する必要があります。
これに関しては残念ながら例外はありませんので、特定建設業許可が必要となる工事が控えている場合は、今スグに社内の主任技術者を監理技術者にするために、監理技術者資格者証の交付を受け、かつ、監理技術者講習を修了しましょう。
パターンその⑤「専任技術者が現場に出ている」場合
お問合わせ内容:弊社は夫が専任技術者、経営管理業務責任者は妻である私です。従業員は現場で働き始めた息子(資格なし)と事務作業担当の娘の4人で細々とした家族経営の会社です。この場合、現場の主任技術者は夫でいいんですよね?専任技術者ですが、息子は資格もなく、職歴も浅いので主任技術者にはなれないですよね?
主任技術者は旦那さんでOKです。この悩みについても、下記をクリアする必要があります。
- 工事現場は事務所から通勤出来るエリアに絞り、事務所と連絡を取れる体制を作る事
- 工事一件の請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事は請けない事
この場合、息子さんは主任技術者の要件は満たせていないので、息子さんを主任技術者として現場に行かせないように注意しましょう。
対処法をご紹介します!
ここまではあくまで例外です。
よって一定の条件がクリアできない場合は、法律を守る!という意味を込めて、その工事は請負わない方がいいです。
とはいえ、目の前に良い条件の現場があれば諦めきれないのが経営者。。。
さて!ここからは、どうすれば一番いい形で建設業をやっていけるかを紹介します。
これが一番いい形です!
しかし建設業界は慢性的な人材不足なので、資格者の確保には本当に時間がかかります。
人材紹介会社を利用したり、求人広告を出したりした場合は費用や労力もかかります。
雇用するとお給料も払わないといけないですしね。
でも首尾よく雇用出来た場合、こんなメリットが考えられます!
- ① 少々遠い現場であっても主任技術者であれば対応が可能です!
- ② 事務所から10km以内の現場は専任技術者が担当し、それ以外は主任技術者が担当する事も可能です!
- ③ 同時に複数の現場が対応可能になるので、売上向上が見込めます!
- ④ 一定の要件を満たす必要はありますが、雇用した方が、取得した許可業種以外にも対応した資格を持っている場合、許可業種を増やすことも出来ます!
ただし有資格者を雇用した場合、取得した建設業許可の内容に変更が発生するので、国家資格者・監理技術者の変更届を忘れずに!
終わりに
今回は実際にあったお問合せに基づいて書いてみました。
配置技術者は建設業許可を取得する前には中々気づけない落とし穴なので、お悩みの方やお困りの方は今すぐお問い合わせください!
【執筆者】ローイット関西行政書士事務所
代表行政書士 中市 勝
建設業手続きの実績はグループで300件以上。関西に携わる建設業関連(建設業・産廃業・宅建業)をメイン業務とし、その中でも建設業許可に特化。大阪・東京での行政書士事務所のグループとして一人親方から上場企業まであらゆるニーズに対応。